01.3.31
息をひそめるとのこぎりの刃の音だけが響いている。
花見客の陽気な笑い声が遠くに聞こえている...
ここは昼間っから酔っ払いでにぎわう桜満開の太宰府政庁跡、通称都府楼跡地。
そのわずか100m奥、ちょうど死角になる竹林で持ち主に無断で竹を切って
いる男がいる。ボクだ。
畑でキュウリ、インゲン、トマトの支柱にする竹だ。
だって畑の支柱、ホームセンターで買うと高いのだ。
2mの支柱で1本2〜300円はする。もちろん1本では支柱にならないから
うちの小さな畑でも10数本は要る。しかもすぐ曲がったり折れたりするので
毎年買い換えなくてはいけない。
そう考えると持ち主に見つかって怒られる危険を冒してまでも
自然で無料で丈夫な竹を拝借したくなるのだ。
ボクだって常識と分別はあるつもりだ。
持ち主に事情を話して菓子折りの一つでも持っていく礼儀も
わきまえているつもりだ。
しかし肝心のその持ち主がわからないのだからしょうがない。
ひっそりとした人通りの少ない場所ではあるが、一応目撃者がいないか
時折あたりを見渡しながら淡々と作業を進める。
ほどよい太さの竹を物色しまず根元から切る。
地面に立ててみて自分の背丈より頭一つ分の高さ、2mぐらいの位置で
上を切る。
よりいい竹を探し奥に進んでみるといくつか同じように竹を切った跡がある。
共犯者がほかにもいる。そう考えただけで少し楽になった。
案外ここの持ち主もたまに人から切ってもらわないと竹が茂りすぎて
かえって困るんじゃないだろうか。都合のいい解釈がどんどん膨らんでいく。
仕事を終え10数本の竹を車に積んで待たせていた2人の息子と帰る頃には
罪悪感はすっかり消えていた。
桜並木を通りながら帰る途中、7歳にして社会のルール遵守に厳格な長男ソーシが
ゴングに救われ立ち直りかけたピーター・アーツに強烈なボディーを見舞う。
「お父さん、ほんとはこれってしたらいかんことっちゃんね」
...来年からは一人で行こう。
以上ひとんちの「竹」を黙って「取」るという悲しいお話でした。
竹泥棒の現場をフォーカス byソーシ