スーパーおデブさん
01. 4. 21
社会人になって以来知り合いに会うたびこのかたずっと
挨拶代わりに言われ続けてきたことがある。
「また太ったやろ?」である。
高校、大学時代とずっと65kgをキープしていた。
それが就職して急に生活が規則的になったことが災いし少しずつ体重が増え続け
結婚してさらに加速度を増し気がつくととうとう80kgになっていた。
幸い身長もあるのでそうでもないと自分では思うのだが、妻からは「デブ」とののしられている。
それ以上に、数字が大きいことは何でもすごいことだと素直に信じているわが子達から
体重計に乗るたびに「お父さんすご〜い!」と尊敬の眼差しで見られることの方がもっと辛い。

昔はほお骨が出ていてあごのラインがさわる者皆傷つけるほど鋭角だったところが自分では気に入っていた。
今、鏡を見るとほお骨がどこにあるのか肉に埋まってしまってわからない。
耳の下からあごにかけてのラインも見事なまでに半円を描いている。分度器のようだ。
できることなら「実はこれシリコンだったんですよ」と宍戸錠のように除去してみたい。

これでも昔は陸上の短距離選手だった。カモシカのような細い足で地元では
カールルイスの再来と恐れられ、知る人のみが知っていた。
運動会の花形的存在であったのは当然のこと、この話はいまだに誰も信用してくれないが
朝通学するバスにちょっとの差で乗り遅れても全速力でバスを追いかけ追い越し
次のバス停で余裕でそのバスを待っていた。いやほんとにほんとの話である。

ところがである。昔の自分を知らない人と過去の部活動の話になると大抵の人はボクに
「ラグビーやってたでしょ。フォワード。」となぜかポジションまで決めつける。
そこで「いや、陸上やってました。」と言おうものなら皆同じように一瞬沈黙し考えた挙句、
「...砲丸投げとか円盤投げとかそっちのほうですか?」と言われる。
それがいやで最近では多少面倒くさくても「以前は今より15kgほど痩せてましてねえ。陸上部で
400mを専門にやってたんですよこれでも」と相手に有無を言わせず一気に説明することにしている。

太ってから辛いことはたくさんあるけど得したことは一度もない。
第一子どもの運動会で走るのが一苦労である。
昔取った杵柄でちょっと子どもにいいとこ見せてやるかと心では思ってもいかんせん体がついていかない。
なんせ昔のやせてた頃に15kgの米俵を担いで走っているようなものだ。きつくないわけがない。

もっと辛いことには、顔がふくよかなのでよっぽど健康そうに見えるのか
会社で具合が悪くてたまらない時でもそうと見られることは少ない。
上司から「おまえ具合が悪いんじゃないのか?無理せず早退しろよ。」
と言って貰うためには、ただでさえ具合が悪いのにさらに具合が悪そうな
演技をしないことには気付いてもらえないし信じてもらえない。

そんなに嫌なら少しは痩せる努力をすれば?と妻は言う。
それができるなら苦労はしない。
だいたいボクに痩せろということはビールと焼酎をやめろということだ。
ということは酒のつまみのためにやっていると言っても過言ではない野菜作りも目的がなくなりやめることになる。
すると当然ホームページの貴重なネタがなくなりHPの作成意欲はなくなってしまう。

妻よ、ボクが痩せようと思うだけで連鎖反応になって我が家はいろんなことを失うことになってしまうのだよ。
もちろんそんな理屈で納得するわけがない彼女はいつかニュースで見た、あまりに太りすぎて自力で動けず
しかも大きすぎて部屋の中から出られずに家の壁を壊され担架で担ぎ出された
アメリカのスーパーおデブさんの話を持ちだす。
ローンも終わらないうちに家の壁をぶち抜かれるのは勘弁してねと妻は脅す。
「そんなことあるわけないだろう!」せせら笑いながら部屋を見渡しリビングの
一番我が家で大きな窓に目をやる。
万一この先延々と太りつづけたとしてもこの窓から出られないことはいくらなんでもないだろう...
そう納得したあと飲みかけのビールを一気に飲み干した。うまい!!

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